償いノ真夏─Lost Child─
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石段を上って、真郷は思わず息を漏らした。
「夜叉比女(やしゃひめ)神社……」
朽ちていくなか、なお息吹を感じさせる紅い鳥居をくぐる。
「お祭りの時、あそこの祭壇で巫女さんが舞を奉納するの」
小夜子が指差す先は、境内のその奥にある、社の舞台だった。
「舞?」
「そう。娘に見立てられた巫女さんが、夜叉さまを鎮めるために舞うの。……巫女は、十八歳以上の村の女達から選ばれる」
小夜子はそこまで言い終えると、口をつぐんだ。
まるでその先は禁忌だとでもいうように。
「どうやって選ばれるの?」
気になったことは、知りたくなってしまう性分だ。
真郷に対し、小夜子は困ったように眉を下げる。
それを見ていた夏哉が、やれやれ、と肩をすくめた。