償いノ真夏─Lost Child─


「一応、村じゃタブーになってるんだけど。〝啓示〟ってのがあるんだよ。ま、大人はよく〝オシルシ〟とか言ってるけど」

誰にも言うなよ、と前置きしてから、夏哉は話始める。

「巫女は夜叉さまが選ぶ。選ばれたら、身体のどこかに必ず蛇みたいな痣ができるんだ。それがオシルシ」

選ばれる絶対条件としては、まず女であること。

それから、美人であること。

「神様も面食いなんだな」

なんとなく呆れたような口振りの真郷に、夏哉も同調した。

「ほんとだよなー。ま、自分の恋人の代わりなんだから、キレイな方が良いって事なんだろ」


ざわざわ。

木々の揺らぐ音に、小夜子は肩を震わせた。

「も、もう二人とも。そんなこと言ってたらバチが当たるよ」

ざわ。

葉の掠れる音が、やけに大きく聴こえる。

ざわ。

それはまるで、囁きのような──…


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