償いノ真夏─Lost Child─
「どうぞ。あげるよ、記念に」
「え?いいの?私が貰っても……」
「もちろん。──いらなかった?」
小夜子はぶんぶんと首を横に振ると、ぬいぐるみを受け取った。
それを胸元で抱いて、真郷を見る。
「大事にする……!」
真郷は笑顔を返すと大きく頷いた。
小夜子の笑顔を見られるのが嬉しくて、幸せで。
胸が、少し切なくなるような。
この想いは、大人になったら汚れてしまうのだろうか。
いや、きっと。
綺麗なままだ。
母とは違う。
「なに難しい顔してんだよ?」
「ごめん、何でも……それより、たこ焼き食べたいな」
「へ?ああ、じゃあオレも食おうかな」
「わ、私も!」
肩を並べて歩く二人の後を、小夜子も追いかける。
響くひぐらしの声も、祭り囃子に吸い込まれる。
三人の姿も、祭りの人混みに溶けていった……。