恋のはじめ






「それを着ろ」





その瞬間、咲希が顔を顰めたのを土方は見逃さなかった。





唇を噛み締め、『誠』の文字を強く睨んでいる。






「島原・・・・?」






不振を抱きながら呼ぶと、咲希は我に返ったように土方を見上げた。






少し息が荒くなっている。







「何でもない・・・・です」







咲希は羽織を力強く握り締め、その場を走り去った。






残された土方は「ふー」と一つため息をついて、こう言った。








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