ワケがありまして、幕末にございます。
「チッ、アイツ等…」
「まぁまぁ、多分今だけだから」
楽しませといてやれよ。
―――きっと、忙しくなるのは明日の夜、日付が変わった後だから。
「ったく…。
おい、戻って飯食えよ?」
…嗚呼、良くない予感がする。
「心配、ありがとう」
土方の近くに寄って、まるで人形の様に瞳を動かさず見つめながらそう言った。
「…?」
嗚呼、嫌な予感、が止まらない。
この予感が当たらなければいい。
けれど当たった時の為に。
もしもちゃんと土方を見て言えなくなってしまった時の為に。
今だけ、素直になってやる。
「土方、ありがとな」
「……」
「今、気持ち悪いとか思っただろ」
「違ぇよ、気色悪ぃと思ったんだよ」
「…ハゲてしまえ」
確かにガラじゃないのは分かってる。
…けど、言わないと後悔しそうだったから。
風が生温く、星の瞬いていない、5月30日の夜だった。
「(…嫌な予感がしやがる)」
土方がアタシを目を細めて見ていたのなんて気付かない夜。