ワケがありまして、幕末にございます。
発せられた声はまるで自分ではない様な低さで。
“アンタなんていなければ”?
知ってるよ、そんなこと。
“産まれなければ”?
分かってる。
アタシだって何回も思った。
今の惨事だって、アタシが居なければ起こらなかったのだ。
色々と思っている間に頭が冷え、冷静になったのを感じる。
視界に浅く息をしている父が入り、
『止血、しなきゃ』
と1人ごちた。
とりあえず血を止めなきゃ、と父に近付きしゃがむ。
止血の為に着物を破り縛ろうとした時。
後ろに殺気を感じ、再び本能的に体が動いた。