ワケがありまして、幕末にございます。
「…時が流れるんわ、早いな…」
「うっわオッサンくさ」
「うっさいわ。
せや、近々新しく幹部が入隊すんで」
「げ。」
もうそんな時期かー。
伊東大蔵
改名後の名は伊東甲子太郎。
アタシ、嫌な予感すんだよなー。
「…知っとるんか、奴の事」
丞の声のトーンが少し遅くなった。
アタシの様子を伺っている様だ。
「あーいやー…」
知ってるも何も…うん。
何て言おうかと言葉に詰まっていると聞こえたその声…に
再びげ。
「市村ー!!
探したよー!!」
出来れば探さないで欲しい、切実に。
遠くから来る足音と声に顔をしかめる。
「…愁、アイツに付きまとわれてるん?」
「…そうみたい」
「ほな頑張りぃ」
「……薄情者。
じゃあちょっくら逃げるわ」
足音とは反対方向にダッシュ。
漸く見えないのに慣れてきて、走ることも出来るようになりました。
まだ若干不安定だけど。
「気ぃ付けや…」
小さく聞こえた丞のその声に振り返り、うっすら目を開け微笑む。
そして再び縁側を駆けた。