わたしとあなたのありのまま ‥2‥
と、どこかから戻って来た同じクラスの男子が、教室へ一歩足を踏み入れたところで何かを思い出したように不意に立ち止まる。
そうして山田を振り返って言った。
「山田、お前今日、日直だろ?
ザビエルが『まだ日誌取りに来てねぇ』っつってご立腹だったけど」
『ザビエル』とは、我がクラスの担任、津田先生。
50手前にして、すでに頭の先端が寂しいことになっているから、皆そう呼んでいる。
偶然にも日本史の教師で、本人もこのあだ名を気に入っていたりする。
明らかに悪口なのに。中傷なのに。
私も田所に『ブタ』って呼ばれても、嫌ではなくて、むしろ嬉しい。
それと似ている気がする。
「やべっ、忘れてた。
さんきゅっ」
教えてくれたクラスメイトに軽く右手を上げて礼を言い、私たちには「ちょっと行ってくるわ」と言い残して、山田はクルリと背を向け、まるで一陣の風のごとく走り去ってしまった。