ハッピーエンドから始まる物語
「………っ、相変わらず…っ、いい一撃をくれるじゃないか」



ゴホ、と一つ咳き込んで殴られたみぞおちに手を当てながら女性の肩に顔を埋める。


「本当に…一国の王女にしておくには惜しい人材だよ、セリア。」

「そんな惜しい人材を王女にしたのはお前だろロード。」

「ははっ違いない。」

「んで?ホント何の用な訳?」

「つれないね。私のキスじゃ用にならないかい?」


そう言ってセリアの肩から顔を上げてもう一度口づけをしようと唇を近付ける。




「「あっいたー!!」」




口づけ寸前で幼い声高な声が二人の耳に届く。



「クレス、マリー。」

「「かあさま!」」



セリアに呼ばれ嬉しそうに駆け寄る。


まだ4、5歳の年であろう二人の身長は当然セリアの腰に届く訳もなく、ふわりとしたドレスに突っ込む。


その嬉しそうな顔で駆け寄ってきた我が子が可愛くて、自然にほころんだ笑顔になりながら二人の身長に合わせるように屈む。


「なんだなんだどうしたー?」


ドレスに顔を埋めていた二人の幼子がぱっと顔を上げる。


父親譲りのブラックオニキスの色をした瞳がセリアを映す。
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