夏の空~彼の背中を追い掛けて~
もし無事に、紀香の家に着いたとしても、家に帰ったら妊娠の事を家族に伝えなければいけない。
そしたらまた、私の気持ちなんか無視して、無理矢理病院へ連れて行かれる。
だったらこのまま何処にも辿り着けず、山の中で子供と一緒に空へ昇るのも良いかも知れない。
不気味な程に静まり返った無音の世界が、私の心にある生きる希望を徐々に奪い、気付けば長く続く坂道を上っていた。
「真弥!どこ行くの!?ノンちゃんちはそっちじゃないよ!?」
後ろからバイクのヘッドライトがパァーッと照り、俊ちゃんが駆けて来る気配を背中で感じた。
追い掛けて来てくれたの?
内心は嬉しかったけど、私は振り返らず、前だけを見て歩き続けた。
「待てよ!真弥!待てったら!!」
走り出す俊ちゃんに対し、私は早歩きまでしか出来ない為、アッサリと捕まってしまった。
「放してよ!赤ちゃん産んで欲しくないんでしょ!?だったら放っといて!」
「放っとかない!放っとける訳ない……」
俊ちゃんは私が1歩も歩けない程の強い力で、ギューッと両腕で抱き締める。
「正直…今でも凄く戸惑ってる。子供を堕ろして欲しい気持ちは消えない。でも…命は守るべきだって気持ちもある…」
言葉を通して、苦悩する俊ちゃんの気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
「どっちを選ぶにしろ、急がなきゃいけないのは分かってる。でも、選べない……」
うん…。