夏の空~彼の背中を追い掛けて~


『久し振り』『もう元気になったの?』『大丈夫?』と言った言葉は口にせず、壊れ物を扱うような、気遣いと視線が何と無く心に痛い。



でもだからと言って、可哀想と思われるのも嫌。



きっとお互いにとって、これがベストな状態なのかも知れない。



教室によそよそしい空気が漂う中、1日が終わって行った。



それから2週間。



どうにか登校を続ける事が出来、3年生は約1ヶ月間の休みに入った。



だけど、卒業後の進路が決まっていない私は、担任に呼ばれている。



今はそれが憂鬱で仕方ない。



仮に就職先が見付かったとしても、6月半ばに赤ちゃんが産まれるから、直ぐに産休に入ってしまう。



『就職も進学もしない』と言えば、その理由を話さなければいけない。



「ハーーーッ。進路どうしよう…。先生に何て言おう…」



このピンチを乗り越えるには、どうすれば良いか…。



ボソッと呟いた私の独り言に、近くでテレビを見ていた母が、いとも簡単に解決してくれた。



「先生には家業を継ぐと言いなさい」



あっ!成る程!!



家は代々、和菓子屋を営んでいる。



何処かの企業へ就職しなくても、後継ぎだって立派な就職。



就職先さえ決まれば、何度も学校へ行かなくて良いし、アレコレ先生と話さなくても良い。





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