もらう愛=捧げる愛
「あの日、ボク、ウチのじーちゃんの病院から出されてさ、若葉病院での研修に行かされてたんだ」
「うん」
「で、会議室がわからなくて偶然会った初音さんに“研修はどこの部屋?”って聞いたんだ。その時、碓井さんが資料持って“初音”って声かけてた。あ…名前で呼ばれるの、イヤ?」
「ううん!そうじゃなくて。ただ今更、どうしてだったのかなぁ、って不思議だったから」
「そっか。“初音”って、かわいい名前だよね?」
あたしは、この名前が好きじゃなかった。
バカみたいに何度も男に捨てられる母親につけられた名前。
一生つきまとうこの名前。
母がつきまとうこの名前。
あたしも母のように狂った人生を送ってしまうんじゃないだろうか、って。
誰かに名前を呼ばれる度、そんな気になった。
でも、ハルくんに“初音さん”て声をかけられると。
“はつね”って甘い声で呼ばれると。
悪くないかも、って。
特別な意味はないんだろうけど、初めて心に音をもらったような明るい気持ちになる。
“初音”
生まれて初めて色の灯ったあたしの名前が。
今は、好き。
「うん」
「で、会議室がわからなくて偶然会った初音さんに“研修はどこの部屋?”って聞いたんだ。その時、碓井さんが資料持って“初音”って声かけてた。あ…名前で呼ばれるの、イヤ?」
「ううん!そうじゃなくて。ただ今更、どうしてだったのかなぁ、って不思議だったから」
「そっか。“初音”って、かわいい名前だよね?」
あたしは、この名前が好きじゃなかった。
バカみたいに何度も男に捨てられる母親につけられた名前。
一生つきまとうこの名前。
母がつきまとうこの名前。
あたしも母のように狂った人生を送ってしまうんじゃないだろうか、って。
誰かに名前を呼ばれる度、そんな気になった。
でも、ハルくんに“初音さん”て声をかけられると。
“はつね”って甘い声で呼ばれると。
悪くないかも、って。
特別な意味はないんだろうけど、初めて心に音をもらったような明るい気持ちになる。
“初音”
生まれて初めて色の灯ったあたしの名前が。
今は、好き。