もらう愛=捧げる愛
♪~♪~♪


鳴ったのはあたしのケータイ。


バッグの中を覗くと、着信は多田さんから。


「ちょっと、ゴメンネ?」


ケータイを持ち、あたしはトイレに入った。


土日、2日とも多田さんからのメールと電話は全無視だったから、そろそろ連絡がつかないとマズイ。


「もしもし…?」


『初音、今どこ?』


少し怒ったような声にちょっと焦るけど、これもいつもの計算通り。


不安がらせて、怒らせて、諦めさせる。


それが自然消滅に似たあたしのお別れのプロセス。


「友達と食事してて…」


『今すぐ帰って来い』


「でも…」


『今すぐだ。わかったなッ』


それだけ言われて通話が切れた。


もう少し…ハルくんといたかったのに…。


「はぁ…」


こじれそうな予感に、あたしはケータイを握り締めて肩をすくめた。


仕方ない…。


帰って少し媚びた方がいいかも…。
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