もらう愛=捧げる愛
翌日、眠れなかった朝、出勤前にアパートのチャイムが鳴った。


多田さんかもしれない…。


体を固く身構えて、ドアの向こうの気配をうかがった。


「初音?いるのか?」


…星野課長。


ドアをゆっくり開けて、課長を玄関の中に入れた。


「初音?」


「…っ…っ…!」


正常な精神を保ちきれずに、あたしはその場に泣き崩れる。


「初音!大丈夫か!?多田と何があった!?」


「あたし…あたし…!」


肩を支えられてソファーに座る。


涙を拭う左手の甲の傷を課長は見逃さなかった。
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