愛する人。



 彼がシートベルトを締めてエンジンをかけると、車は静かに走り始めた。



「……教えてくれないなんて、意地悪」



 私が口を尖らせると、それを見た彼はクスクス笑いながら、


「ごめん。

 でも、驚かせたいんだ」



 その、敬語じゃない言葉に……一瞬で私の心臓は早鐘を打つ。



 ……確信犯だよね、絶対…!



 真っ赤になって二の句を告げれない私は、大人しく外の景色を見る事にした。








 車の中は、静かなクラシックが流れていて。

 なぜか2人の間に会話はなくて……。




 今思えば、彼は気付いていたのかもしれない。



 私が何をしようとしていたのか……


 気付いていたんだ。




 ……きっと。




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