愛する人。





『……そうか。良かった。

 心配だったんだ。あの二人をずっと見てきたから……母さんも俺も』



 そう言った櫂兄さんは当時研修医で、裕太兄さんの担当もしていた。

 担当医ほどではなかったけど、裕太兄さんが入院していた年月、同じように櫂兄さんも一緒にいたから。


 俺とは違う情が、確かにあったんだ。





『彼女が元気に笑ってくれてるなら、医者として、本当に喜ばしいことだ』

「兄さん……」




『――蓮。

 頼むから、彼女を傷つけることはしないでくれ。
 お前の気持ちも分かる。昔から彼女を想っていたことも、理解してる。

 ―――でも』




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