亡國の孤城 『心の色』(外伝)
日の飛翔は高いが、地上を見下ろす眩しい眼差しは厚い暗雲の背に遮られていた。
廊下に点々と並ぶ窓から覗き込めば、どんよりと俯いた暗い空は今にも泣きそうだ。
…嫌な天気だ。
出所も分からなければ行くあても無い、例えようのない不安が胸中でざわめく。
こんな時こそ、しっかりとしていなければ…。
寝室の前まで来ると、クロエは自分の頬を軽く叩いた。
開く気配の無い静かな扉をノックしながら、ポツリと声を漏らす。
「………カルレット…私だ。…具合はどうだい?………カルレット…?」
いくら声をかけても、目の前の扉は無言を貫くばかりだ。
扉の取っ手に手をかけてみれば、それはいとも容易くクロエの入室を許した。
扉の隙間に半身を滑り込ませ、訝しげに室内を覗き込めば……探していた意中の彼女は、寝台に横になっていた。
カーテンも開けていない、日の光が差し込まない暗がりの中。
音を立てないように、クロエは忍び足で寝台にそっと歩み寄る。
すぐ傍にまで来ると、クロエはこちらに背中を向ける彼女を真上から覗き込んだ。
(………寝ているのか)
どうやら、熟睡しているらしい。いつもの彼女ならば、ちょっとした物音でもすぐに目を覚ますのだが…。
昼食を持ってきたが…起こすのは可哀相だ。
このまま、寝かせてあげよう。
枕元に腰掛け、クロエはそっと…妻の長い髪を撫でた。
シーツに波紋の様に広がる金髪。
自分のとは正反対の、柔らかくて艶やかな、とても美しい髪だ。
女性の髪は、美しい。だが、いくら見ていても全く飽きないのは彼女だけだ。
………それは多分、私が本当に彼女の事が好きなのだからだろう。
自分は本当に…カルレットが…。
…そう、初めて会った時からずっと…。
そのまま愛おしげに撫でながら、彼女の綺麗な寝顔をぼんやりと見下ろしていた時だった。
…不意に、横たわるカルレットの華奢な肩が、ビクリと跳ねたのだ。
廊下に点々と並ぶ窓から覗き込めば、どんよりと俯いた暗い空は今にも泣きそうだ。
…嫌な天気だ。
出所も分からなければ行くあても無い、例えようのない不安が胸中でざわめく。
こんな時こそ、しっかりとしていなければ…。
寝室の前まで来ると、クロエは自分の頬を軽く叩いた。
開く気配の無い静かな扉をノックしながら、ポツリと声を漏らす。
「………カルレット…私だ。…具合はどうだい?………カルレット…?」
いくら声をかけても、目の前の扉は無言を貫くばかりだ。
扉の取っ手に手をかけてみれば、それはいとも容易くクロエの入室を許した。
扉の隙間に半身を滑り込ませ、訝しげに室内を覗き込めば……探していた意中の彼女は、寝台に横になっていた。
カーテンも開けていない、日の光が差し込まない暗がりの中。
音を立てないように、クロエは忍び足で寝台にそっと歩み寄る。
すぐ傍にまで来ると、クロエはこちらに背中を向ける彼女を真上から覗き込んだ。
(………寝ているのか)
どうやら、熟睡しているらしい。いつもの彼女ならば、ちょっとした物音でもすぐに目を覚ますのだが…。
昼食を持ってきたが…起こすのは可哀相だ。
このまま、寝かせてあげよう。
枕元に腰掛け、クロエはそっと…妻の長い髪を撫でた。
シーツに波紋の様に広がる金髪。
自分のとは正反対の、柔らかくて艶やかな、とても美しい髪だ。
女性の髪は、美しい。だが、いくら見ていても全く飽きないのは彼女だけだ。
………それは多分、私が本当に彼女の事が好きなのだからだろう。
自分は本当に…カルレットが…。
…そう、初めて会った時からずっと…。
そのまま愛おしげに撫でながら、彼女の綺麗な寝顔をぼんやりと見下ろしていた時だった。
…不意に、横たわるカルレットの華奢な肩が、ビクリと跳ねたのだ。