亡國の孤城 『心の色』(外伝)
駒の中でもあらゆる場所を行き来出来るクイーン。
内助の功とも言えるその無敵っぷりで、キングの進行を妨げる敵を次々に飲み込んでいく。
「………嫌いよ………大嫌い……」
「……おい………聞けよ……」
取ろうと思えば、彼女のキングはいつでも取れる。
駒一つ動かすだけで、このキングは取れるのだ。
そこで勝敗は決まる。
………だが。
………臆する事無く、ただただ、切り進めて来るキングの存在が………とても不思議で、おかしくて、妙に……痛々しく思えて…。
(………)
………戦場を縦断してくる無謀なキングに、何故か手が出せない。
いや、そんな事は正直どうでもいい。
アベルが知りたいのは、不可解なキングの結果ではなく………。
………それを操る、彼女の真意だ。
何を考えている?
何をしたい?
その疑問が晴れるまでは、自分はこのキングを止められない。
そうこうしている内に、リネットのキングはアベルのキングの目前にまで迫っていた。
この奇妙な勝負は、どうやらキング同士の攻防戦となりそうだ。
しかしそれも、長続きはしないものだろう。
「………」
「………………本番はここからね。…………貴方の人間性を問いますわ……」
再び意地の悪い笑みを浮かべたかと思うと、リネットはやはりキングを掴み、アベルのキングへと歩を伸ばし………。