Adagio


笑顔で語る奏が痛々しい。

だけど少し引っかかる部分があって、俺はそこを質問することにする。

「迫るって、何を迫られたんだ?」

「は?」

「金よこせとか物を貢げとか…言われたのか?」


まるで借金の取り立て業者だ。

別れて正解だと思う。

そう告げると、奏は突然声を上げて笑いだした。

「あ…っははは!!リーチ、何それ…!ちょ、高2でその頭はマジヤバいって!もうちょっとピアノ以外のことも考えたら!?」

今度は俺が首をひねる番だった。


奏がグロスの光る唇を曲げて、ラインストーンの散るネイルを頬にあてがう。

「聞きたい?」

「何だよ、わけわかんね…」


瞬間、奏の唇が俺の耳元まで近づいて。


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