使者の黙示録
◇希望

・果たされた使命

翌日――

太陽が、まだ顔を見せていない明け方。

冬が近づいているとは思えないような生ぬるい風が吹くなかで

団司は崩れさった建物の傍で、くわえたタバコに火をつける。

うつむきかげんの顔を上げれば

文明の成れの果てを思わせる廃墟が、どこまでも広がっている。


「使者よ」


団司の知らない間に、ルゼが背後まで来ていた。


「もう起きていたのか」

「うん。子どもたちは?」

「車のなかで寝ているよ」


その車は、車道をはさんだ小さな公園の傍に駐車している。

みんなは昨日のうちに、修道院から10キロほど離れたこの場所に移動していた。

< 316 / 357 >

この作品をシェア

pagetop