使者の黙示録
この先、当分の間は、いま使っている車のなかでの生活が続くことを考えると

その車が、すぐにでも壊れるのではないかと心配になるのは当然だろう。


しかし、団司の言葉は、ルゼのそういう不安をぬぐい去る。


「大丈夫みたいだよ。車の塗装が、君の言う『うす紫の雨』を防いだようだ」


自動車メーカーが開発した最新の塗装技術が、車体を守ったのだ。


ルゼは思う。

神が、生き残った人間に

人類の歴史を新たにやり直せというなら

文明の象徴といえる自動車が、根絶されていたとしても不思議ではない。


しかし、神は

そうはしなかった。

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