雨宿り
「お前なぁ、ナンパ男に『会えてよ かったです』って何、挨拶してんねん。阿呆ちゃうか」
あ、阿呆?
「渉、言っていい事と悪い事あるで」
「阿呆やし阿呆言うただけや。ナンパされて喜んで」
「誰も喜んでへんがな。それにあの人はナンパ男と違って中学の先輩やで」
「たまたま話してて分かっただけやろ。見た事あるし声掛けたなんてナンパの手口やろ」
な、何でこんなに言われなあかんのん。
段々腹立ってきた。
「あんたな、人の事やいやい言うるけど、元はあんたが遅れて来たんが悪いんちゃうん。自分の事は棚に上げてよう言うわ」
「そ、そりゃ遅れて来た俺が悪い。そやけど俺がもっと遅れてたら、お前 あのナンパ男と何処か行ってたんちゃうか?」
はぁ~?
言うに事欠いて何言うねん。
「行くわけないやろ。私が待ち合わせしたんは先輩やのうて残念な事にあんたやねん」
「ざ、残念な事にてお前なぁ」
で、
「ええかげんにしいや」
「それはこっちの台詞」
に戻る。
もう、デートなんて甘い雰囲気なくなった。
「帰る!」
「……」
「私、帰るし」
「か、勝手にしたらええやん。俺も気分悪い、帰る」
な、何やのん?
「気分悪いんはこっちやわ」
さっさと歩き出した。
――
―
追いかけても来いひん。
な、なんちゅう男や。