雨宿り


何か思い出してきた。

「思い出したか?」

「私らがおやつをもろて部屋を出た時に聞こえたんや」

あの時は私と美桜とお母さんとお客さんの四人で…

あれが原因か?

まぁ、確かに美桜が思い込む気持ちも分かる。

あの時、珍しくお母さんも怒ってたもんな。

あれからあの人は家に来いひん。

いや、来れないんや。

お母さんから出 入り禁止にされてるもん。

まぁ、ご本人さんは気づいてないんやろうけど。

あの時

お菓子をもらって部屋を出てドアを閉めるか閉めないかの時に聞こえてきた言葉。

「お姉ちゃんは社交的で明るいし別嬪さんやし、ええお嬢さんやね。そやけど美桜ちゃんは幼稚園やのに 喋らへんし、ちょっと暗いなぁ。愛想よかったら少しは可愛くなるのに女の子として損やわ」

おばさんは軽い冗談のつもりやったんやけど…

私は慌てて二階に連れて上がったけど、当然、美桜にも聞こえてたやろな。

美桜は意味分からへんかったやろうけど

「その後でな美桜が私に『大姉、暗いって何?愛想ないって何?』って聞きにきたんや。私は、そのおばさんがまさかそんな事を言うたはるなんて夢にも思てへんから説明してしもた。 そしたら美桜が『ふーん、私、暗いんや、可愛いないんや』言うて涙を落としたんは、今でも覚えてるわ」

薔子姉がつらそうな顔をする。

「間接的に私らにも責任あるんや」



< 177 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop