雨宿り

【其の一】




「わぁ~バイクや~」

そりゃバイクやろ。

「走ってんのとか、テレビとかで見た事あるけど目の前で大きいバイク初めて見た」

そんなもんか。

別に750ccみたいにデカイやつやないんやけど。

「委員長とこ、誰もバイク乗らへんのん?」

「お父さんは車やし、後はお母さんとお姉ちゃん二人と私やろ。原チャはあるけど」

委員長って三姉妹なんや。

みんな委員長に似て美人なんやろなぁ。

見てみたい。

「何ぼぉーとしてるん?」

へっ?

委員長の鋭い視線。

「もしかしてお姉ちゃん見たいとか」

ギクッ!

「そ、そんな事ない。美人のお姉さん見たいなんて」

「美人のお姉さん」

あっ、

「ハ、ハハハ…」

笑ってごまかそ。

「まぁええわ。確かに二人共美人やしな、私と違うて」

えっ?

委員長…

もしかして…

「どうしたん?早よ行こ」

「あっ、あぁ。メットは持ってる言うてたな?」

「うん。お姉ちゃんに借りた」

赤いメットを出して被った。

「後ろ、跨いだらええんやな?」

「あぁ。しっかり捕まってや」

「う、うん」

委員長が俺の腹に手を回したのを確認してアクセルを吹かす。

あんまりスピード出したらあかんやろな。

――



委員長が後ろでしがみついてるのて…

なんか嬉しい。

風をきって走ってる空間に俺ら二人だけ

背中に委員長の体温が感じられて

このドキドキが委員長にばれませんように。

少し遠出をして海岸沿いへ走らす。

バイクを留めて、

「海かぁ~もう8月末やのにまだ泳いでる人多いな」

「そやな、委員長」

「うん?」

「来年も泳ぎに来よな」

「来年って受験生やで。ええんかいな」

「……」

委員長が、俺の頬を指でつっついてニヤと笑い

「ウ、ソ! 息抜きは大事やから、海も花火も…なんやったら映画もプールもツーリング?も、サイクリングもショッピングも」

「い、委員長!」

「フフ 来年だけやなくって今日からもずぅーと一緒に…もちろん受験勉強もな」

「美桜」

「うん。私は委員長やのうて美桜」

美桜が俺にキス!

「…やで、渉」






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