雨宿り



そんなこんなで練習が始まった。

これが…めっちゃハズい。

何たって

『ロミオ、ロミオ あなたは何故にロミオなの』やで

『捨てられるものならロミオの名を捨てましょう』やで

笑わんと言うなんて拷問に近い。

第一 仮面舞踏会の出会いで踊るだけでも、二人共笑いを堪えて腹が痛い。

演出やってる奴には怒られるし…

あ~踏んだり蹴ったりや!

稽古が始まって二週間。

あまりにも出来ないので二人居残りまで命じられた。

教室で二人きりの練習。

美桜と二人だけでいれんのは嬉しいけどなぁ。

「渉君、練習する?」

「うん、美桜真面目にやるねんで。 笑うなや」

「渉君かて笑わんといてや」

何故か最近、美桜は俺のことを渉君と呼ぶ。

渉でええのに…

何か距離を感じる。

「始めよ」

「あぁ」

――



練習は進み…

お互い顔を見合わせても笑うのは我慢できるようになった。

だが、

問題のキスシーンは

「お芝居なんやから、マジでしたら殺す」

などと物騒極まりないお言葉を頂いた。

ほんまは、ちょっとだけでもしたかったんやけどな。


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