雨宿り



「お前…何一人で盛り上がってんね ん」

「えっ?」

「誰が誰と別れるって?」

渉って意地悪や。私に言わすんか?

「私が…渉に…ふられるんやろ?」

「何で?何でそうなるねん」

へっ?

「お前、何か果てしなく誤解してっぞ」

「そ、そやけど、私が二週間程ややこしい事してたさかい嫌いになったやろ?愛想尽かしたやろ?」

涙がボタボタ落ちる。

渉の顔もはっきり見えへん。

「美桜って…思い込み激しいなぁ」

へっ?

何か呆れられてるような

…えっ!

渉に抱きしめられた。

「もう泣くなや、な」

背中を撫でてくれる。

「美桜」

「…ヒック」

「俺…別れる気なんかないから」

「…ヒック」

ほ、ほんまやろか?

あんまり激しく泣いてるから同情してるだけちゃうやろか?

「確かにこの二週間程お前がややこい事してたんはおもろないけど…そんな事くらいで別れるか?」

「……」

「それとも、お前…別れたいんか?」

「い、嫌や。別れとうない。渉が好きや大好きやもん…ヒック」

ギュッと力一杯抱きしめられた。

「俺かて美桜が大好きや。別れるわけないやん。例えお前が別れる言うたて絶対別れへん」

「…ほ、ほんま?」

渉の顔を見ると…苦笑いしてる。

「当たり前やん。そんな事くらいで嫌いになる程、俺の気持ち軽ないで」

またギュッてしてくれた。

私…素直に嬉しい。

「隣にいてええのん?渉の隣にずぅー といてかまへんのん?」

「あぁ、ずぅーと俺の隣にいて。な、約束やで」

「ぅうん。ずぅーと隣にいる。渉が嫌言うまで隣にいる。ヒック…」

「もう泣き止みな」

「止まらへんねん」

「フッ…そうか。ほな泣きたいだけ泣き」

「うん」

渉に抱きしめられながら泣き続けた。

それは、嬉しい涙やから…

いくら流してもええな。

なっ、渉?

ずぅーと隣にいさせてな。






※Fin*









< 84 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop