ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
谷口さんの拷問は、いまいち甘いんだよな。
かと言って、お前がやってみろとか俺に振られたら困るんで、ただ黙って大人しく見守る。
取調室端っこの記録席に腰掛けてはいるけど、俺、記録なんかしたことないしね。
梶のためにとった出前のカツ丼を、彼が食べられそうにないんで、代わりに俺が食している訳です。
「あのさ、蜂須賀の目的地だけでも教えてくんねぇかなぁ?」
顔の潰れかかった梶くんに、谷口さんは尋ねる。
「ひらねってひっへんらろ(知らねって言ってんだろ)?」
梶くんは、口の中が腫れてしまって巧く喋れないようだ。
「谷口さんが優しいうちに言った方がいいと思うけど?」
本気で梶くんの身を案じて言ってやったのに、彼はペッと、俺に向かって唾を吐きやがった。
「好きにすればいいさ。君の命だ」
言って、丼の底に残った最後のご飯を、口の中へ箸で一気に掻き込んだ。