ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
谷口さんは、兄貴に従順だ。即刻、日置と連絡を取っている。



「兄貴、一発殴らせろ」


颯爽と歩くその背中に言えば、兄貴はヒタと立ち止まり、ゆっくりと振り返った。



「殴れよ、皆人。気が済むまで。いっとくが余り時間はないぞ」


そして、穏やかな笑みを浮かべたその人は、「心配かけてすまなかった」と続けた。



そんなん言われたら――

殴る気も失せるし、チキショー。



「どうせみゆっちにもまだ会ってねーんだろ?」


「いや、もう会った。再会の記念に愛の儀式も一回済ませた」


「はぁ? あんま時間ねーんじゃなかったのかよ? てか、みゆっち、臨月だろ? あんた、何やってんだよ?」


「冗談だ」


言って兄貴は緩やかに微笑む。



「あんたの冗談は、百発百中、笑えねんだよ」


最大の悪口を言ったつもりなのに、兄貴は小さく声を漏らして笑った。


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