赤い下着の主

 その翌日、密かに泣きじゃくって夜更かしをして出勤した美奈実は、コピー機に向かおうと席を立った時に倒れてしまった。

 それまでの身体的、及び精神的な無理がたたった結果だった。

 その後、彼には内緒で退社。

 彼に内緒で引越し、彼に内緒で携帯電話を解約。

 3年以上一緒に暮らした彼との関係を経つのは、美奈実が想定していたよりもずっと簡単だった。

 行方をくらまし携帯を変えてしまえば、彼が美奈実に接触する手立ては何もない。

 恋愛関係は、共に生活をしていたとしても実に脆い関係だ。

 現に美奈実が彼の元を去って一年が経過したが、彼と接触することはなかった。

 探してさえいないかもしれないが――



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