首(外道×貴族)【BL】
「の、前に俺、天パなんだな~!!
 何?これまでそれさえ意識したことなかった?
 どーんだけ俺に興味無いのって話~!!」
「待て、サリト!愛してるぜサリトっ」
「俺もだよ、だ・か・ら・愛のムーチッ!」
「あ゛あ゛ああー!!!」
轟く、キケロの悲鳴と学校の始業ベルが、
同時に鳴った頃、陸橋の下では、
サリトの差し金で工事中の細工が掛かり、
使えなくなった陸橋を睨むゴドーの姿があった。
マラソン大会の近づいた運動部は部の威信に掛けて、
上位入賞者を出来るだけ多く出そうと挙って練習に力を入れる。
ゴドーの所属するバスケットボール部も例に漏れなかった。
ゴドーは唸りながら後悔をぐるぐると脳内で回す。
朝練習の帰りに、駅前のコンビニに寄ろうなどと、
誰が言い出したのだろうか・・・自分だ。
「リオネ、すまん」
「いえ、俺も買いたいものあったんで」
朝の車通りの多い大通りを横切ることが、
どれだけ困難であるかは二人とも知っていた。
信号はここから200m遠い。
「工事中って、何の工事だよ」
毒づいて見上げても、陸橋の上に仕事人の姿はない。
一時間目の授業開始までは、あと30分。
「先輩、仕方ないですよ、走れば向こう回っても間に合・・・!」
妥当な妥協の意見を、言い掛けてふいに、何かに気を取られたかと思うと、
リオネは工事中の枠を飛び越えて、陸橋を走って上りだした。
「リオネ?!」
ゴドーは驚きと疑問の色を頓狂な声に乗せ、咄嗟に後を追う。
「何してんだよ兄貴!」
リオネの叫んだ先には緩い巻き毛の、どこかぼんやりとした印象の男。
その眼鏡の奥の目がこちらを捉えたと思うと、ゴドーは妙に緊張した。
警戒するような、探るような視線に居心地の悪さを感じる。
「ゴドー・・・」
弱弱しい声がし、ふと視線を眼鏡の男の足元に向ける。
「キケロ?!おまえ・・・!どーした?!」
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