首(外道×貴族)【BL】
ぼろぼろと、止まらない涙に気づかぬ振りをするよう、
独り言のようにぼんやりと喋ってくれるキケロが、
ルカスには妙に暖かく感じられて、
ぎゅ、と抱きつけば背を擦られた。
このまま守られていたいような気持ちを、
作り出す力が、その胸にはあった。
「このままマジで和解しねーか?
 もう、充分な気ぃして来たわ」
「何が・・・」
「サリトの奴も忙しいみてーでさ、
 アレ以来接触ねぇし、
 恐怖ってすげーよな、
 おまえにあいつの声聞かされた時、錯乱して、
 とにかく、どうにかしておまえを屈服させなきゃなんねーと思って、
 それと人が心底怯えてんの見て笑ってるおまえに腹立って、
 だから復讐してやんなきゃな、って思ったんだけどよ、
 ・・・もう充分だ、気ぃ済んだ」
「・・・」
「あとおまえ殻破ると可愛い」
「・・・どこの口が言ってる」
「これからはよ、おまえの都合とかも少し考えるし、
 対等っつーか等価交換的な・・・、
 喧嘩の出張とか、俺にできる用事は請け負う、
 だから、おまえの言葉で言う愛人っつーのか?
 そういうふうになれねぇか、俺等」
「・・・」
「つっても、俺の誘いには確実に答えてもらうわけだけどな」
「・・・それは対等とは言わない」
「この条件なきゃ、てめぇ俺のこと完全無視すんだろ」
「よくわかってるな」
「譲歩してるぜ、これでも、・・・気持ち違うだろ?
 おまえは俺にただ一方的に、脅かされる状況から、
 俺を利用することもできる立場になるんだよ、
 どうだ、サリトを除けば負け無しだぜ、俺は」
階段で長く抱き合うわけにはいかず、
ルカスはおずおずとキケロの胸を押した。
キケロは怒りも嘲笑も無い静かな話し合いの顔をしていた。
ルカスが返事を延ばしている間、喧騒の音が二人の間を、
微風のように走り抜けて行った。
一度、涙の痕を中指で拭くと、
ルカスの顔には笑みが浮かんだ。
「いつも、しているおまえは良かったろうが、
 されている俺は苦しいばかりだった・・・。
 おまえはどこを取っても最低な野蛮人で、
 好感の持てる要素が一つもない」
「・・・」
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