首(外道×貴族)【BL】
「その様子じゃ失敗か?」
焦燥したルカスから事態を悟り、
キケロは笑みを引っ込めている。
「少し考えればわかることだ」
「あ?」
「あいつも馬鹿じゃない!
 俺達が、あいつを誤魔化そうとしたのがわかったんだ、
 怒っていた・・・!本気で・・・っ!
 ・・・嫌われた」
ぽつりと、切なげに呻いたルカスに顔を顰め、
キケロは首を捻った。
「おまえらデキてんのか?」
「蹴るぞ」
「・・・いや何つーか、
 妬けんなぁ、と」
「・・・おまえだってあいつに嫌われたくはないだろう?
 あいつは良い奴だ、凄い奴だ、
 エリックとのことも、本当は応援しているんだ、俺は!
 あいつが一番似合いだろうと、
 ・・・、本当は、応援して・・・!
 二人とも、好きなんだ・・・、だから、
 俺は、ただあの二人の傍に居たいだけで・・・」
混乱した頭が、心を洗いざらい言葉にしてしまい焦る。
止まらぬ告白をどうすればいいのか、考える余裕が欲しい。
「おい待て、聞き捨てならねぇだろそれ、
 俺忘れてね?エリックと俺は七年の・・・」
「幸福になりたい!
 あの二人の傍で」
「・・・」
ぼろぼろと涙の、零れていることに、
気づくより早くキケロの腕が身を捉えた。
「?!」
ルカスはすっぽりとキケロに抱きしめられ、
妙な安心感に包まれてしまっていた。
「何だよもう、おまえは・・・」
聞いたことの無い優しげな声は、
涙腺を刺激し、今まで溜めて来ていた辛さを、
すべて痛みの形で胸に運び込んだ。
「っ・・・」
「おまえのこと割と好きなんだよな、
 あんまり辛くさせたくねー、
 とか言ってスゲー矛盾だけど、
 全部俺が原因だもんな・・・」
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