月の骨



「それにしても、かなり汚れちゃったなあ…。」

 朔夜は僕が手渡したビラを残念そうに見つめた。

 落下の衝撃でそれは泥にまみれていたり、しわだらけになったり、誰かに踏まれてしまったりしていて、ひとに配れるような体裁はしていなかった。

「でも元から人気ないしなあ…。興味ないひとを集めてもね。」

 朔夜は一人ぶつぶつと呟いていて、僕は気になって彼女の手元を覘き込んだ。そこで初めて、僕が拾ったのは天文サークルのビラだと気づく。

「人気、そんなにないんですか?天文サークルって。」

「まぁ、趣味でやってる人たちの集まりだから…。」

 朔夜は腰に手をあて、困ったように唸る。

「活動って、何するんですか?」

「勿論、天体観測。あと天体写真も撮ったりしてるし……何?君、もしかして興味あるの?!」



朔夜は大きな黒眼を輝かせ、僕に顔を寄せてくる。

それこそ、鼻の頭が触れそうなほどで、思わず引いた顎が肯定の合図になった。



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