十五の石の物語
(おかしな男だね。
まるで愛の伝導師気取りだよ。)

サリーがジネットの耳元で囁く。



(まぁ!サリーさん、そんなことおっしゃってはいけませんわ。
とても良いお話だったじゃないですか!)

(馬鹿馬鹿しい~!
あたしにはそんなチャラチャラしたもん、似合わないよ。)



「では、この後、早速、そこへ行ってみましょうか?」

「え~っ!本当に行くのかい?」

ヴェールの提案にサリーは驚きの声を上げた。



「この町ではちょっとゆっくりしようと決めたじゃないですか。
いろんな所を見てまわりましょう!
……ね、レヴさん…?」

「レヴ!」

サリーの声で、私ははっと我に返った。
指輪のことに心を捕われ、ヴェールの言葉は耳を素通りしていたようだ。



「え?あ…あぁ、すまん…
今、何か言ったか?」

「何か言ったかじゃないよ。
あんた、何、ぼーっとしてるんだよ。
食事もほとんど食べてないじゃないか…」

「あぁ…いや、今、食べるところだ…」

そう言って、私はフォークで野菜の欠片を突き刺した。



「レヴさん、体調でも良くないのではないですか?
なんだか、顔色も良くないようですが…」

「いや…なんでもない。
ただ、少し疲れているだけだ。
休むと決まったから、きっと気が抜けてしまったのだな。」

「あんた、ふだんからちょっと抜けてるんだから、それ以上抜けたら困るよ!
しっかりしなよ!」

「……わかっている…」



ヴェールが私のことをみつめていた。
気を付けなくてはいけない。
こんなことが度々あったら、皆に怪しまれてしまう。
指輪のことはもう考えないでおこう。
考えた所でどうにもならないのだから。
そう思うのに、指輪のことがなかなか頭を離れない……



(気持ちを切り替えなくてはならないな。)



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