- π PI Ⅱ -【BL】
大きな水槽で優雅に泳ぐ魚たちを見て、俺は楽しかった。
「周!あれ可愛いぞ」なんて小さな赤い魚を指さすと、
「お前のほうが可愛いぞ?♪」って答えが返ってくるし、魚の化石のジオラマを見て、
「すっげぇな」なんて笑うと、
「お前はああゆのが好きなのか。ふむ、今度俺が作ってやろう。骨の一部にリボンをくっつけてプレゼントしてやる♪」
って答えが返ってくる。
骨にリボンとか!その発想がやっぱり意味不明なんですけど!!
甘い口説き文句なのか、はた迷惑な愛情なのか。
それでもそんな変な…くだらない会話で始終暇はせず、俺は楽しかった。
屋外のイルカショーを見るため、並べられてた長椅子に腰掛けて、俺はちょっと襟元を合わせた。
「さむ……」
とぽつりと漏らすと、周が無言でコートを脱ぎ俺の肩に掛けてくれる。
ありがたかったけれど、
「お前は寒くないのかよ」と気になったことを聞く。
「俺はそこまで寒がりじゃない。お前が風邪引いたら俺は心配で仕事に手をつけられなくなる」
なんてさらり。
いえ…仕事してくださいよ。
「こんなんで風邪引かねぇよ」って苦笑いを漏らしたけど、でもその気遣いがうれしかった。
なんつーの?周ってほんっとにスマートなヤツだよな。
こうゆうこと自然に出来るって言うか、まったく嫌味じゃない。
女だったら、こんないい男からそう言われたら、嬉しくてぶっ倒れるだろうな。
なんて考えていると、
「まだ時間あるしな。コーヒーでも買ってくるか」
と席を立ち上がった。俺も行こうかと思って腰を上げたけど、
「お前はここで待ってろ。変な男から、女からもだけど声を掛けられてもついてったらいかんぞ?お前は俺のものなんだからな」
なんてしっかり釘を刺され、周はさっさと行ってしまった。
「愛情エキスをたっぷり入れてやるからな。楽しみにしてろよ♪」
なんて振り返りながらウィンクを投げかけてくるし。
スマートでかっこいいけど、なんつぅか、最後の一言で台無しだな。
何だよ!愛情エキスって!!怖くて飲めん!