- π PI Ⅱ -【BL】


暗い夜道に、ところどころクリスマス用の電飾がほどこされていた。


キラキラ…作り物のその輝きはを見て―――もうすぐ年末であることを思い知る。


毎年この時期になると、恋人がいればプレゼントのことを懸命に考え、めんどくさいなぁなんて思いながら、それでも居なかったら居なかったで寂しいなぁなんて思っていたっけ。


今年は―――桐ヶ谷はどうするんだろう。


去年は付き合ってた宮下さんとフランス料理のコースを食べに行くといっていた。


だけど宮下さんの方に急用が出来たとかで、ドタキャンされたとか嘆いてたな。


今思えば、彼女が本命と会っていたに違いないが。


今年は―――、大好きなワインを傾け、あの変態が作ったご馳走でも食べるんだろうか。


一緒に笑いあって、甘いキスを交わして―――同じベッドで眠るのだろうか。


「三好ぃ、家反対方向だろ?終電なくなっちまったけど大丈夫かぁ?」


いくらか呂律の怪しい桐ヶ谷が、遠くの方を見る。


珍しいな…酔っ払ってるみたいだ……


「お前だって一緒だろ?危ないから送ってくよ」


「まぁた、そうやって俺を女扱いするぅ!」


桐ヶ谷が口を尖らせる。


それでも俺は桐ヶ谷の隣で軽く笑い返した。




「女とか男の問題じゃないよ。好きなヤツを家に送り届ける…守りたいって思うのは、男の性(サガ)だ」




桐ヶ谷が足を止めた。


アスファルトに伸びた影もぴたりと止まる。


「……かっこいいな、お前。そうゆう男になりたいな~。


だからもったいないって。



俺なんてやめておけよ」




桐ヶ谷の言葉が、冷え切った夜空に吸い込まれて―――それでも桐ヶ谷の声だけがやけにはっきりと聞こえた。




それと同時に急に周りの音が遠ざかって、目に映る光景が止まって見えた―――



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