- π PI Ⅱ -【BL】
―――あのときと同じ感覚。
目に映るすべてのものは作り物で、でも桐ヶ谷だけは唯一ホンモノな気がした。
ぼんやりと桐ヶ谷を眺めていると、
「何だよ」と桐ヶ谷が苦笑を漏らす。
笑った拍子に足をもつれさせ、わずかに桐ヶ谷の体が傾く。
「わっ。危ねぇ。お前大丈夫かぁ?」
思わずいつもの癖で何気なく桐ヶ谷の腕を取ると、桐ヶ谷の華奢な体が俺の腕の中にすっぽりと収まっていた。
「大丈夫~。わりぃ」
桐ヶ谷がふわふわ笑う。
酔ってるんだろうな?
こんな隙―――…?って言うの?
ひどく無防備だ。
桐ヶ谷の爽やかな石鹸の香りが心地よく鼻の下を潜り抜け、それでも思考回路は別のことを考えてる。
あれ…こいつこんなに小さかったっけ?
こんなに華奢だっけ?
こんなに―――……