- π PI Ⅱ -【BL】
「どうした?」怪訝に思って眉をしかめると、
「いや…お前ってやっぱ男だったんだなぁって思って…」と三好が缶を置いて苦笑いを浮かべる。
「はぁ?何言ってんだよ、気持ち悪いな」
「いや…分かってたことだけど、ほら…お前って顔が女っぽいから時々男と居る気がしないっつぅか」
「言うなよ。気にしてることなんだから」
「わり…えっと、ドライヤーは…」と三好はドライヤーの置き場所を説明してくれた。
三好は慌しく説明をくれると、視線を逸らしてすぐに行ってしまった。
変なヤツ。
そう思いながらも俺はドライヤーを借りた。
――――
――
「ホントにそこでいいのか?」
ベッドの上から半身を起き上がらせて三好が俺を覗き込む。
俺はベッドの横に敷いた布団で寝ることになった。
三好の部屋はセミダブルのベッドが一つ。周の部屋のあの大きなベッドじゃないから、男二人なんて狭いし、そもそも肩を並べて眠るのも変だ。
「いいって。俺どこでも寝れるし。布団貸してくれただけでもありがたい」
ふわふわの羽毛布団を引き上げると、俺はちょっと笑った。
最悪ネットカフェとかで一泊を考えてたから、これだけで充分。
三好が電気を消すときに、ベッドに立てかけていた鞄が倒れた。
中から“円周率の求め方”とミニ周おおかみのキーホルダー(鍵にくっついてる)が出てきて、俺はちょっとだけ息を飲んだ。
「わり。倒しちまった」三好が慌てて拾い集めようとしてくれて、俺はその手を止めた。
「大丈夫。俺やるよ」
ふわふわした周おおかみの体から、わずかに爽やかでどこか危険な甘さ含んだ香りが香ってきて―――
それが今はちょっとだけ息苦しい。