- π PI Ⅱ -【BL】
僅かに開いたカーテンの間から、月の明りが部屋を青白く照らし出していた。
三好のいつになく真剣な顔も……
「桐ヶ谷…俺……」
顔が近づいてきて、爽やかなミントの吐息を間近に感じる。
きっと歯磨き粉かなんかだろう。
三好の唇をすぐ近くで見て、俺は目を開いたまま固まった。
「三好―――…?」
乾いた空気に俺の問いかけが響き三好は、はっとしたように目を開いて口を噤んだ。
「わり…なんでもない」
ぶっきらぼうに小さく言うと、ふいと三好の顔が遠のいていく。
びっくり…したのは俺の方だ。
三好…一体どうしたって言うんだよ…
そんな疑問を拒否するかのように、三好は俺に背を向け布団を被っていた。
―――
――
次の日の朝、目覚めると三好の姿はなかった。
テーブルに鍵とメモが残してあって、そのメモには
“今日営業会議だった。先に行くワ。鍵は会社で貰うよ”
と短く書いてあった。
会議―――…?
まるで逃げるかのように、もぬけの空になったベッドを見て
昨夜のことが夢でないことを、悟った。