- π PI Ⅱ -【BL】
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俺の知ってる限り、三好はゲイではない。入社して6年経つが、その間恋人と呼べる彼女は少なくとも4人ほど知っている。
見てくれも悪くないし、気が利くしおもしろいからモテるっちゃモテるな。
女にだらしないヤツでもないし、かといって真面目すぎるほどお堅いヤツでもない。
まぁ世間一般、普通の男ってわけだ。
「昨日はマジでごめん!」
帰り間際、俺は三好に鍵を渡そうとロビーで待ち構えていた。
慌ててやってきた三好は開口一番に、手を合わせて謝ってきた。
その態度にこっちが面食らう。
「いや…別に…大丈夫だけど」
「昨日俺、酔ってたんだよな。きっと!何て言うの?しばらく彼女も居なかったし」
なんて早口にまくし立てる。
「だからって男に走るなよ」俺は笑って、三好に鍵を手渡した。どうやら昨日のことは本気ではなさそうだ。
その対応に三好がほっとしたように肩を撫で下ろして、
「悪い…ホントに……どうかしてた…」
と眉を寄せてちょっと苦笑を漏らした。
「いいって」俺も笑って返すと、三好も恥ずかしそうに笑った。
「それよりお前、寝言で変なこと呟いてたぜ?円周率がどうのこうの、3.14がどうたらこうたら」
円周率?3.14??
ぅわ。そんな寝言を??
って言うか夢でも結局考えてたのは
周のことか―――
あいつとのことなんとかしなきゃな。
俺は電源を落としたままのケータイを取り出し、ため息をついた。