- π PI Ⅱ -【BL】


背中に小さな痛みが走って顔をしかめる。


「…って。何するんだよ!」


俺が周を睨み上げると、周は俺の顎を乱暴に掴み同じだけ乱暴な動作で口付けをしてきた。


―――!


あまりの驚きに目を閉じることも忘れるぐらい。


いつもの周からは考えられないぐらい乱暴なキス。堅く閉ざした俺の唇を強引に舌でこじ開けて、やがては舌が侵入してきた。


「―――っ!止めろよ!!」


僅かに唇が離れた瞬間を狙って、俺が逃げるように顔を離そうとすると周は俺の腰に素早く腕を回し、あっけなく俺の動きを封じ込める。


逃げ惑う俺の顔を周はあっさり拘束。


「お前が、あの男の家なんかに泊るからだ」


周の切れ長の瞳の奥で険悪な何かが底光りしていた。はじめてみる黒い光りに、嫌悪感―――というよりも、恐怖を感じた。


目を開いて身動きできずに居ると、再び口付けが降りてくる。




――――

――…




「言い忘れた。桐ヶ谷さぁ……」




三好の慌てたような声が聞こえてきて、俺は目を開いた。


―――三好!?


びっくりして目を開くと、それ以上に驚いてその場で固まった三好が視界の端に入った。


周の唇が離れて行き、俺は慌てて周を押し戻した。


「…三好。これは…!」


「わ、ワリ!!」


三好は慌てて、回れ右をすると逃げるように走り去っていった。






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