- π PI Ⅱ -【BL】
三好の走り去る後ろ姿を呆然と見送りながら、
必死につくり上げていたものが、俺の中で崩れ落ちていく音をはっきりと聞いた。
もはや言葉も出せずに力なく腕を降ろすと、周が俺の手を掴んで、
「来い」と有無を言わさず引っ張っていく。
もう何も言い返す気力なんてないけど。
周の車に乗せられ、大人しくシートベルトを締めた。
―――
「あいつに…何かされなかったか?」
周は運転しながら、相変わらず温度の感じられない冷たい口調で口を開いた。
「何かって?何もないよ。あいつとは友達だ」
酔っ払って、ふざけて、冗談で(?)キスされそうにはなったけど。
「あいつだけは…三好 達矢だけはダメだ」
いつになく厳しい口調で言われた。
「三好以外ならいいのかよ」思わず憎まれ口が言葉に出る。
「それもダメだが、特にあいつは危険だ。近づくな」
「はっ!何だよそれ。わけわかんね」
危険って…ホントわけ分からない。あいつがお前に何をしたって言うんだよ。
俺にとってはお前が一番危険だっつうの!
そんな心情を読んだのか、周はぎろりと俺を一瞥して、
「今度の連続強盗事件。三好 達矢が捜査線上に上がってきた。
あいつは今現在、
警察の重要参考人となっている」
淡々と言い放った。
こんな険しい視線で見られたことがない。
ふざけて言ってるわけでないことを―――知った。