さあ、俺と秘密をはじめよう
「綺麗な歌声だね」
どこからかそんな声が響いた。
「え?」
私はびっくりしてあたりを見渡す。
「あはは。こっちこっち」
私は上から声がしたので見上げてみると給水塔の上に1人の男の子が寝っ転がってうつ伏せになってのぞいていた。
私はしばらく茫然とその場に立っていた。
私は何とか頭を回転させた。
なんでこんなところに人が!?
それよりも聞きたいことがあった。
「い、いつからそこに…?」
「んー、1限目が始まってからかな」
とすると、この男の子は今の今まで私の歌を聞いていたことになる。
私は段々と恥ずかしくなってきた
(き、聞かれたーーー!!は、恥ずかしい…)
穴があったらそこに飛び込みたい気分だ。
私はコンクリートにしゃがみ込み顔を伏せた。
本来ならここで悲鳴をあげているところなんだけど、あいにく授業中なのであげなかった。
自分でも意外と冷静だ…こんな時まで冷静に事を判断しなくてもいいのにつくづく損な性格だ。
「え?えっと、どこか痛いのか?」
男の子は給水塔から飛び降りて私のところへ駆け寄り、顔をのぞいた。
「ち、違うの!!恥ずかしいだけ…」
そう言ったら男の子はきょとんとした顔で首を傾げた。
「どうして?なんで恥ずかしいの?めっちゃ綺麗だったし歌は上手かったし。はっきりいうと俺、お前のこと天使みたいだって思えたんだ」
この人はなんて恥ずかしげもなくそんなことを言えるのだろうか。
そして、それは私に意図も容易く心の中に入ってきて浸みわたった。
素直に単純に受け取れた。
たぶん、この人の性格だろう。純粋で真っ直ぐ、ひねりのない言葉だけど私にはとても嬉しくて、温かった。