きみ、ふわり。
悠斗は両手で腹を抱えて、気持ち前屈みになりながら、
「鏑木……先輩。
僕たち、先に……体育館へ行ってます」
苦し気に呻くようにそう言うと、一緒に居た他の奴等と共に歩き出した。
再び『サエちゃん』に視線を戻せば、キラキラした瞳を向けている。
どうやら、俺の返事を待っているらしい。
それにしても、これは完全に恋する乙女の眼差しだ。
抱いてしまったら……
ちょっと面倒くさいかな。
「俺、彼女とかいらねんだけど」
念のため牽制しておく。
一時の欲望に流されて安易に動くのは非常に危険だ。