スピカ
……



……



…………




「……って、こらぁーっ!」

チッ。すっぽかし作戦も失敗か。

「勝手に入って来ないでくれません?
もしまだ着替えてたらどうすんのよ」

「着替え終わったら、教えるっつったじゃん!」

「ああ、もううるさい」

ダンゴムシのように布団に身を包める。諦めて出ていってくれたらいいのに。従兄弟のちびっ子の上をいく欝陶しさだ。

「着替え終わってるじゃん!」

「じゃあまだ着替えてる途中って事で」

「じゃあって何だよ、じゃあって!」

「……」

「みーやーびーちゃーん!」

「うるさいうるさいうるさい!」

こんなにも人を欝陶しいと思った事はあるか? いや、ないだろう。
それくらい今の楸さんは欝陶しい。
干渉してくるのなんて、亞未とお母さんだけで十分だ。後は皆、放っておいてくれればいい。

「もう……! 出てけぇーっ!」

〜♪〜

怒鳴り声と同時に、携帯の馬鹿でかい着信音が鳴り出した。どっちに驚いたのか、楸さんは目を丸めている。大きな黒目が浮き出てしまいそう。

「け、携帯、鳴ってる」

「見たら分かるわ、そんな事」

せっかく寝ようと思ってたのに。誰だよ、全く。
苛立ちを隠せないまま、あたしはのそのそと布団から這い出た。
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