スパイシーな彼~あなたとの甘く優しい瞬間
「元気になったら、話し合いするから、もう少し時間下さいって」


「は…はい、わかりました。また連絡します。ありがとうございました」


晴香が電話に出てくれることを期待した自分がバカだった。


出るわけないよな…


情けない自分が嫌になり、中途半端な掃除もやめて、ビールを開けて、一気に飲んだ。


誰もいない静まりかえった部屋の中で、祐輝は泣いていた。


失ったものの大きさを本当に感じていた。


今になって思い出すのは、達也の結婚式の二次会で、酔った晴香をホテルのベッドに寝かせた時のあどけない可愛い顔…


付き合い始めて、車の中で、好きな曲、好きな食べ物、将来の夢を笑顔で語っていた笑顔…


結婚式の幸せそうな微笑み…


世利を生んで、初めて会った時の母になった晴香の凛々しい顔…


全てが色つきの綺麗な思い出になるはずだったのに、たった2年で色あせて、セピア色になっていく…


今俺が晴香にできること…祐輝はひたすら考えている。
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