断崖のアイ
「覚えていてください」

 今はまだ小さくとも、いずれは全ての自由をあなたに与えられるでしょう。

「カーティスのように不満を抱いてる者は必ずいます。彼らが真に望んでいたものを、わたしは創り上げたのですから」

「ユーリ!」

 呼び止めた声は、消えゆく姿を留める事は適わなかった。

 そよぐ風がベリルの頬をかすめ、木々の葉を揺らす──かすかな葉のこすれる音だけが辺りを満たし、強く瞼を閉じた。

 すでに消え去った気配を追うように目を開くと、視線を宙に漂わせる。

「均衡だと?」

 吐き捨てるようにつぶやいた。

 どうすれば良かったのか、何が正しかったのかなど解りようもない。

 新たな生き甲斐と信念を得た青年に喜ぶべきなのだろうか、それを与えた己を称賛でもすればいいのか。


「連れて行くなら連れて行け。滅ぼすなら滅ぼせばいい」


 ──木々の隙間から覗く空を睨み付け誰にでもなく発した言葉は、そのまま彼の中に戻り、心の奥底に沈んでいった。



 END


※作中に登場する一部の団体名や社名、武器関係などは創作に基づく物で実際のものとは関係ありません。


完結:2013/02/26
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