断崖のアイ
「この世界をもっと自由に歩き回り、人々を見て心を安らかにと」

 それがわたしの願い、わたしに属する者たちの願いなのです。

「あなたの心の平穏を願い、あなたの哀しみを我が事のように嘆き、あなたの自由を護ります」

 それが我々の生きる糧、希望。

「よくも言う」

「もはやわたしの信念を砕くことは誰にも適わない。わたしはあなたと共に歩み続けます。そして、これだけは理解してもらいたい。わたしは決して不幸せではないということを」

 至上の幸福がわたしにもたらされたのです……青年は、恍惚と発して何かを投げ渡した。

 受け取った金貨(コイン)に描かれている紋章(エンブレム)に眉をひそめ、ユーリに鋭い瞳を向ける。

 それは、羽の柱の天秤を月桂樹の葉が囲んでいるものだった。

「傲慢だ」

 エンブレムの上部には、『blessing god(神の祝福)』という文字が刻まれ、ベリルは苦く目を眇(すが)めた。
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