断崖のアイ

*問いかけ

「完敗だ……」

 部屋に戻り呆然と立ちつくす。

 帰りの車の中でヘインズが励ましてはくれたが、これほどの力の差がある事は正直、予想していなかった。

 技術などと言うレベルではない、完膚無きまでに打ちのめされ肩を落とす。

「どうやって捕まえろというんだ」

 ベッドに腰掛け、意気阻喪(いきそそう)とうなだれた。

 気配を殺して近づいたんだ……なのに彼は気がついていた。わたしが未熟だとしか思えない。

 何度も彼の動きは確認して、それでも実戦ではまるで役に立たなかった。

「……」

 闘いを思い出しゾクリと背筋から冷たいものが流れる。

 風や水を相手にしているような──流された先に激しい気流が渦巻き、強い衝撃を与えられる。優雅な動きに見とれている間に倒された感覚だ。

 長く生きているというだけの理由じゃない、あれは天性のものだ。
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