断崖のアイ
 そのあともベリルの様子は変わらず、5歳になった幼子(おさなご)は以前よりも精悍な顔立ちになりベルハースをさらに喜ばせる。

 その知能は一般的な大学院生にも引けを取らず、このまま行けば世界最高学府にすらも主席で卒業できるレベルになるだろうと期待させた。

 そんな深夜の施設の外に黒い影──黒のボディスーツとタクティカルベスト、そして暗視ゴーグルが男のこれからを物語っている。

「……」

 ゴーグルの左側には施設の見取り図が、右側には赤外線とサーモグラフィによって人影が映し出されている。

 周囲を見回し、3mほどの白い塀を見上げた。

 少し離れて大きめのハンドガンを腰の後ろから取り出し壁に向かって引鉄(ひきがね)を引いた──発射音こそ小さかったが、壁に金属音を響かせて15㎝ほどの金属の棒が突き刺さる。

 それを3回ほど繰り返しハンドガンを仕舞った。

 突き刺さっている位置を確認して一度、深呼吸する。決心したように壁に勢いよく駆け出し、金属を足がかりに壁を飛び越えた。
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